不思議な夢






 不思議な夢を見た。



   *   *   *



 「名雪、入るぞ〜」

 部屋のドアをノックして名雪の部屋に入る。

 今日も気持ち良さそうにく〜く〜と寝ているな。

 たまには早起きをしてくれればいいのに。

 けど毎朝名雪の寝顔が見れるのはいいかな。

 さてと、とりあえず目覚し時計を止めるか。

 全部で32個あるからな。

 ん?また一つ増えてる。

 これで33個か。

 金が貯まるごとに時計を買うんだもんな〜。

 えっと、この時計のスイッチはここで。これはこうやって止めて・・・・・・。

 よし。これで全部のスイッチを切ったぞ。

 さぁ、名雪を起こすか。

 『ピピピピピピ』

 おやっ?時計が鳴り出した。

 おかしいな。止め忘れたかな。

 スイッチ、オフと。

 よし。これで大丈夫だろ。

 『ジリリリリリ』

 むっ、あっちのも鳴り始めた。

 『リンゴンリンゴンリンゴン』

 『たりらりら〜ん』

 『おい!朝だぞ』

 ぐはっ!全部の目覚ましが鳴ってるじゃないか。

 うーん、ちゃんとスイッチを切ったと思ったんだが。ボケたかな?

 『ピピピピピピ』

 え?これさっき止めたやつじゃ。

 『ジリリリリリ』

 『ぶーがーぶーがーぶーがー』

 なんだこれ?止まらないぞっ。

 『ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃん』

 『かんかんかんかんかん』

 『りりりんりりりんりりりん』

 このっ!止まれ!ええい!

 『でろでろでろでろでろ』

 『じりりんじりりんじりじりりん』

 『やんばらや〜』

 「とまれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇいっ!!」



   *   *   *



 『じりりりりりりりん』

 「ん?ここは―――――――オレの部屋か。うおっ、寝過ごしたっ!!ヤバイ、名雪の部屋の目覚し時計が発動してる。このままじゃ近所迷惑だっ!!名雪っ!起きろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」








 不思議な夢を見ました。



   *   *   *



 「最後にマンドラゴラの根を少し加えて――――――」

 鍋の中のジャムが鮮やかなオレンジ色に変りました。

 「――――――できました。新作ジャム、名付けて『甘くないジャムHG(ハイグレート)』ですね」

 前作よりもうまく甘さを押さえていい感じです。

 「秋子さん、おはようございます」

 「おはようございます、祐一さん」

 祐一さんが起きてきました。

 さっそく新作ジャムの味見をしてもらいましょう。

 「祐一さん、新作のジャムがあるんですけどいかがですか?」

 「ジャムですか?そうですね。たまにはいいですね」

 「どうぞ、召し上がって下さい」

 祐一さんが私からジャムを受け取ってパンに塗ってます。

 パンに塗るとオレンジ色がさらに鮮やかでとても綺麗です。

 「いただきます」

 祐一さんがゆっくりとトーストを咀嚼します。

 「味はどうですか?」

 「――――――うまいっす。本当においしいです」

 「ほんとうですか」

 「こんなおいしいジャムを食べたのは初めてです。あの、トーストのおかわりいいですか?」

 「はい。すぐに用意します」

 私はもう一枚パンをトーストにかけます。

 「秋子さん、おはようございます。祐一、おはよう」

 「お母さん、祐一、おはようございます〜」

 「おはようございます、名雪、真琴」

 名雪と真琴も起きてきました。

 「あれ、祐一。何を食べてるの?」

 「秋子さんの新作ジャムだ。すごいうまいぞ」

 「あうー、祐一ばかりずるい。真琴も食べたい」

 「大丈夫ですよ、真琴。まだまだたくさんありますから」

 「わっ、このジャムおいしいよ〜。イチゴジャムぐらいおいしいよ〜」

 「ほんっとにおいしい!こんなおいしいジャムを作れる秋子さんってすごいっ!」

 新作ジャムは名雪と真琴にも好評のようです。

 「なぁ、名雪。このおいしいジャムを俺達だけで食べてるのはもったいないと思わないか?」

 「そうだね。そうだっ!今日学校に持っていって香里にも食べさせてあげようよ」

 「真琴も美汐に持っていってあげようっ!!」



   *   *   *



 「―――という夢を見たのです。ところで祐一さん。新作のジャムはいかがですか?」

 「お断りします」








 不思議な夢を見たの。



   *   *   *



 あうー、なんかお腹空いたなー。

 どこかに食べ物ないかなー。

 できれば肉まんがいいなー。

 あら、あれ、あそこにあるのは――――――肉まんだわっ!!

 これはもう、真琴に食べろってことよね。

 さっそく頂きま――――――あ、肉まんが!

 肉まんがピョンピョン跳ねながら逃げたっ!!

 あうー、肉まんのくせに生意気よっ!

 絶対に捕まえてやるんだからっ!

 「待てーっ!!」

 なかなか素早い肉まんね。

 けど真琴には敵わないわよ。

 「つーかまえたっ!!」

 わぁ、暖かい。

 わっ、こらっ、暴れるんじゃないわよ。

 とっとと食べちゃおう。

 「いただきまーすっ!!」



   *   *   *



 「わーっ!待て、真琴っ!食うなっ!それはぴろだぞっ!!」








 不思議な夢を見たんだお。



   *   *   *



 「すっすっはっはっ、すっすっはっはっ」

 体が軽い。

 ペースもいい具合だよ。

 このまま行けば大会新が出るかも。

 体力もちゃんと残ってるし。

 ゴールまではあとちょっと。

 この角を曲がれば、あとはゴールテープまで一直線。

 「がんばれーっ」

 沿道の人々がエールを送ってくれる。

 「よーし、ファイトだよ」

 私はピッチをあげる。

 ゴールテープがだんだん近くなってくる。

 「名雪、あと少しだっ!!」

 「名雪っ、ファイトよっ!!」

 祐一や香里やクラスのみんながゴールの周りで私を待っていてくれている。

 こんなに嬉しいことはないよ。

 「名雪―――」

 ゴールテープの向こうにはお母さんがいる。

 待っててお母さん。もうすぐ一番でゴールをするから―――

 「―――ここがゴールよ」

 あれ?お母さんが何か持ってるよ。

 あれって―――――――オレンジ色のジャムッ!?

 「ゴールしたらこれでお祝いしてあげるわ」

 お祝いって、まさかシャンペンみたいにそのジャムを私にかけるのっ!?

 「名雪、ジャムシャワーだっ!!」

 「名雪、ジャムプールでもいいわよっ!!」

 うにゅぅっ!いつのまにか祐一と香里もオレンジ色のジャムを持ってるよ。

 それどころかクラスのみんなもジャムを構えてるっ!!

 「名雪、このまま行けば大会新記録よ」

 お母さんがニッコリと嬉しそうに微笑む。

 その手にはしっかりとジャムの瓶が抱かれている。

 ゴールテープが近づいてくる。

 みんながジャムを構える。

 テープを切れば一番でゴール。

 手にはジャムの瓶が――――――

 「だっ!おぉぅっ!!」



   *   *   *



 「真琴。いったい名雪はどうしたんだ?」

 「あうー。さっき秋子さんの作った新作ジャムを寝ぼけて食べちゃったの」








 不思議な夢を見た。



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 「――――――この気配」

 魔物。

 しかも普通の数じゃない。

 1、2、3――――――全部で36体。

 なんて数。

 隣にいるのは佐祐理。

 なんとしても佐祐理を守らなくては。

 魔物はじっと動かない。

 こちらの動きを窺がっているのだろうか?

 むっ!一体こちらに向かって来た。

 殺気を放っている。

 明らかに私に敵意を抱いている。

 迎え撃たなければ。

 剣を――――――剣がないっ!

 どこにもない。

 仕方ない。この椅子で。

 魔物が一歩一歩近づいてくる。

 ギリギリまで引き付けてから一撃を。

 そこっ!!



   *   *   *



 「授業中に寝るなっ!川澄――――――ぐはぁぁぁぁぁっ!!」

 「せ、先生!大丈夫ですかっ!!」

 「また川澄が寝ぼけて暴れてるぞっ!!」

 「よすんだ川澄さんっ!教室でござる――――――ぎゃはぁっ!!」

 「バカ!こんなときにカッコつけて近づくから」

 「あ、倉田さん。危ないっ!!」

 「起きてぇぇぇぇっ!舞ぃぃぃぃぃぃぃ!」



   *   *   *








 不思議な夢を見たわ。



   *   *   *



 「栞」

 「おねえちゃん」

 「またアイスを食べてるのね」

 「だって、おいしいんだもん」

 「ダメよ、栞。アイスばかり食べていては体に悪いわ」

 ホントにこの娘は毎日毎日アイスを食べて。

 もう少し健康に気を使って欲しいわね。

 「それに栞。アイスみたいな甘いものを食べてると太るわよ」

 「じゃあ、体に良くて甘くないアイスを食べるんならいいの?」

 「うーん、それなら良いってわけじゃないけど、バニラアイスばかり食べてるのよりはマシね」

 「わかったお姉ちゃん。私今から体に良くて甘くないアイスを食べるね」

 そう言って栞が違うアイスを出して食べ始めた。

 本当にそんなアイスがあるのかしら?

 「このアイスもとってもおいしいんだよ」

 「栞。本当にそれは体に良くて甘くないアイスなの?」

 「そうだよ、お姉ちゃん」

 「嘘ついてない?」

 「そんな事言うお姉ちゃん嫌いです。嘘だと思ったら食べてみてよ」

 栞がスプーンにアイスをすくって私によこした。

 見た目は普通のバニラアイスね。

 口の中にアイスを運ぶ。

 「!?」

 こ、これは――――――

 「とっても健康的でしょ?それに甘くないでしょ、お姉ちゃん。」

 ――――――健康的?こんなの絶対に体に悪いわよ。

 それにこの味。甘いとか甘くないとか言う次元?

 この味は昔どこかで味わった――――――

 「おいしいです〜」

 栞の持ってるアイスがいつの間にかオレンジ色に。

 栞、あなたの持ってるそれアイスじゃないわ。

 それは昔、名雪の家で食べた――――――



   *   *   *



 「名雪。おまえ香里にジャムを食わせたのか」

 「苦しみを分かち合ってこそ、本当の親友なんだと思うよ」

 「おまえな〜」



   *   *   *








 不思議な夢を見ました。



   *   *   *



 「みしお〜」

 「真琴。どうしたのですか?」

 「あのね、美汐。米寿って何歳のこと?」

 「米寿とは八十八歳のことです。『米』と言う漢字をばらすと『八十八』になるからです」

 「白寿は?」

 「白寿は九十九歳です。『百』の字から『一』を引くと『白』になるからです」

 「喜寿は?」

 「七十七歳です。『喜』の字を崩すと『七十七』に見えるからです」

 「なんでお塩の容器の中にカリカリになったお米をいれるの?」

 「塩が湿気ってくっついてしまわないようにです。お米が湿度を調節する役割を果たすのです」

 「砂糖の容器の中にパンの切れ端をいれるのも同じ?」

 「同じです」

 「じゃあ、卵をゆでる時に塩やお酢を入れるのはどうして?」

 「塩やお酢を入れると茹でている途中に卵が割れ難くなるからです」

 「コタツにおせんべいを入れるのは?」

 「コタツにおせんべいを入れると湿気が飛んで、冬場でもおせんべいが湿気らないからです」

 「どうして障子をはぐ時に霧吹きをかけるの?」

 「紙をふやかしてからの方が綺麗に剥がれるからです。貼る時も紙を湿らせた方がきちんと貼れます」

 「焼いたお魚の尻尾に塩がついているのはどうして?」

 「それは化粧塩と言います。鰭や尻尾が焦げないようにまぶしますって、どうしてさっきから『おばあちゃんの知恵袋』みたいなことばかり――――――」



   *   *   *



 「―――あら、どうやら寝てしまったようですね」

 「みしお〜」

 「真琴。どうしたのですか?」

 「料理のさしすせそって何?」








 不思議な夢を見ました。



   *   *   *



 「完成っ!!」

 お姉ちゃんの肖像画ができました。

 「見せて栞」

 お姉ちゃんが私の絵を覗き込んできます。

 「お姉ちゃん、恥ずかしい」

 私は照れ笑いをしながら少しだけ抵抗します。

 けど、絵はお姉ちゃんに取り上げられてしまいました。

 お姉ちゃんが私の描いた絵をじっと見ています。

 「栞――――――少し歪んでるわ」

 「えぅー」

 それは私も思ってました。

 私が描くと、いつも少し歪んでしまうんです。

 なんとかならないのでしょうか?

 「栞。そんな栞にとっておきの薬があるわ」

 そう言ってお姉ちゃんがどこからか薬を取り出します。

 「絵のうまくなる薬よ」

 絵のうまくなる薬?

 そんなものがあるんでしょうか?

 けど、ものは験しです。

 騙されたと思って飲んでみます。

 コクコクコク

 「!!」

 えうっ、この味っ!!かつて経験した事がない味が――――――

 「め、目の前が揺れてきまして――――――」

 「栞。あなたが描く絵はいつも歪んでるわ。だから、歪んだ目でモデルを見れば整った絵が描けるはずよ。マイナスにマイナスをかければプラスになるって寸法よ」

 目の前が揺れてるどころか霞んできました。

 舌先がジンジンします。

 意識が刈られそうです。

 「さぁ、栞。もう一度絵を描く――――――」

 お姉ちゃんの声が遠くなってきました。

 もう絵を描くどころじゃありません。

 ああ、意識が――――――

 私、最後まで笑っていられたんでせうか―――――――



   *   *   *



 「香里、栞に食わせたのか?」

 「相沢君。姉妹ってのはね、苦しみを分かち合うものなのよ」








 不思議な夢を見ました。



   *   *   *



 今日は舞踏会です。

 舞と祐一さんと佐祐理で出席します。

 とっても楽しみです。

 パーティードレスも用意しましたし、後は祐一さんと舞が来るのを待つだけです。

 「佐祐理」

 あ、舞が来ました。

 「舞〜」

 あれ?舞はチャイナ服を着てますね。

 そうですね。チャイナ服という格好もありですね。

 けど、このチャイナ服。普通のと少し違うような気がします。

 「私は春巻き」

 「春巻き―――ですか?」

 何のことでしょう。佐祐理には良くわかりません。

 「チェリーだったかもしれない」

 何やら舞が一人でブツブツ言ってます。

 「舞、佐祐理さん」

 「あ、祐一さん」

 「祐一、遅い」

 「すまん舞。ぎりぎりまで練習しててな」

 祐一さん、練習ってダンスの練習でしょうか?

 やはり、愛する舞と踊る為に一生懸命なんですね。

 けれど、どうして祐一さんの格好は空手着なんでしょうか?

 あの格好で踊るのでしょうか?

 「舞、佐祐理さん。無事勝ち残って決勝で会いましょう」

 「祐一。優勝したら牛丼」

 「ああ、買ってやる。牛丼でも納豆巻きでも買ってやる」

 「頑張る」

 「お前、食べ物のために頑張るのか?」

 勝ち残るとは何のことでしょうか?それに優勝というのもよくわかりません。

 今日は舞踏会でコンテストでもやるのでしょうか――――――

 『第43回武闘会』

 はぇっ!!いつの間にか『舞踏会』が『武闘会』になってます。

 『試合のコールをします。試合番号1番。三年、倉田佐祐理さん。一年、キング・オブ・スモーさん。第一武闘場でお願いします。続いて試合番号2番――――――』

 「おっ!!初戦は佐祐理さんかっ!」

 「佐祐理。がんばって」

 えっ?えっ?佐祐理は武闘なんかできませんよ。

 「おまえが対戦相手かぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 すごく大きい、身長3メートル、幅2メートルはあるお相撲さんが立ってます。

 もしかして、あのお相撲さんが佐祐理の相手ですか?

 『それでは試合開始ですっ』

 ふぇっ!いつの間にか試合会場にっ!

 「どすこーいっ」

 お相撲さんが凄い勢いで佐祐理に迫ってきます。

 「あは――――あははー」

 こんな時に笑い声が。

 人間、恐ろしいときには笑い声がでるというのは本当だったんですねー。

 「あははー」



   *   *   *



 「ん?佐祐理さん、寝ながら笑ってるぞ」

 「きっと、佐祐理は幸せな夢を見てる」

 「そうだな。それよりも、舞。女子プロレスってのはどうだ?」

 「文科系の部活がいいってさっきから言ってる」

 「寝ぼけて教室で暴れる元気があるんだから、格闘技がいいと思うんだが」

 「祐一、失礼だ。私は突発的暴力症じゃない」

 「格闘技じゃなくても、何か体動かすものの方が舞には似合ってると思うぞ」

 「じゃあ、舞踏会部」

 「またそれか。舞踏会部なんてないだろ」

 「大学にならきっとある」

 「あるか?」

 「なければ作る」

 「それより剣道とか薙刀とかのが舞には似合ってると思うが―――――――ぐはぁ!!」








 不思議な夢を見たんだよ。



   *   *   *



 うぐぅ。仕方なかったんだよ。

 今日もたまたま財布を忘れたんだよ。

 だから仕方なく走ってるんだよ。

 けれどボクの後ろには―――

 「待て!この食い逃げ娘!」

 うぐぅ。たい焼き屋のおじさんが追ってくるよ。

 ボクを捕まえに追いかけてくるよ。

 だけど、何回も逃げてるボクがそう簡単に捕まるはずないよ。

 ボクはこの商店街の道を知り尽くしているんだよ。

 ここの道を右だよ。

 そしてここの狭い路地に突入だよ。

 この路地に飛び込めればもうこっちのものだよ。

 この狭くてジグザグした道は、体の小さいボクならすんなり通り抜けることができるけど、たい焼き屋のおじさんが通るには大変だよ。

 この路地で差をつければもう捕まることはないよ。

 ほら、もうたい焼き屋のおじさんはあんなにうしろだよ。

 さぁ、もう路地の出口だよ。

 ここを飛び出して、どこかにしばらく見を隠せば――――――

 「うぐぅっ!!」

 路地の出口に誰かいるよ。

 このまま行くとぶつかるよ。

 「そこの人よけてー」

 「え?」

 その誰かがこっちを振り返ったよ。

 「ゆ、祐一くんっ?」

 「あ、あゆぅぅぅぅぅぅ?」



   *   *   *



 「あゆ、目を覚ましたか」

 「あ、祐一君」

 「どうしたんだ?びっしょりと汗をかいてるぞ」

 「変な夢を見たんだよ」

 「どんな夢だ?」

 「あのね。ボクがたい焼きを持って逃げてるんだよ。それで、その途中で祐一君にぶつかる夢なんだ」

 「あゆ」

 「なに?祐一君」

 「それ夢じゃないぞ」

 「え?」

 「見つけたぞ!食い逃げ娘ぇぇぇぇぇ!!」

 「うぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」









 (意味不明のまま<終>)













 不思議な夢を見た。



   *   *   *



 私の名前は矢蘇部磯六。

 徒然なるままにSSを書き、ヒグラシ庵というHPに掲載している。

 今もちょうど、「不思議な夢」というSSを書き上げたところだ。

 疲れたことだし眠ろうとしたところ、いきなり私のまわりを何者かが囲んだ。

 「誰だ?」

 私はさっとまわりを窺がう。

 私は9人の美女と1人の目つきの悪い男に囲まれていた。

 「何だ、君達は」

 「ふんっ、しらばっくれやがって」

 目つきの悪い男が私に詰め寄る。

 「いつも俺達をコケにしたSSを書きやがって。覚悟しなっ!」

 美女達も私に詰め寄ってくる。

 私にはこのような目に会う理由など――――――腐る程あった。

 だから私は断固たる意思を持って彼等にいってやった。

 「許してちょっ!!」

 『許すかっ!』



   *   *   *



 「うーん、うーん――――――はっ!」

 「どうしたの矢蘇っち。ずいぶんうなされてたわよ」

 「あかりか。実はな、恐ろしい夢を見ていて――――――」

 『果たして夢かな?』

 「えっ?」




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