警告



 このSSは、「もうひとつの卒業」の裏面にあたります。

 そして、このSSを読むと、「もうひとつの卒業」が全体的にギャグになる虞があります。

 ですので、「もうひとつの卒業」で味わったシリアス感を失いたくない人は、この先を読まないで下さい。




も〜ひとつの卒業(爆)





 オレは、トイレから視聴覚室に帰る途中だった。

 ―――何でこの学校はトイレが少ないんだろう。

 一番近くのトイレがこんなに遠いなんて、間違っている。

 これじゃあ、行って帰ってくるだけで休み時間が終わってしまうじゃないか―――

 そんなことを考えながら廊下を歩いていると、すぐ近くの扉が開いた。

 「ん?」

 その開いたドアの教室は、オレのクラスだった場所だ。

 だから、オレはその方向をふっと向いた。





 「北川君?」

 「お?水瀬か」

 「北川君も学校に来てたんだ」

 「ああ、学校がオレを離してくれないんだ」

 そう言ってオレは肩をすぼめる。



 それにしても、水瀬が学校に来ているとは驚きだ。

 たぶん、相沢の奴が、一人で来るのが寂しいから連れてきたんだろう。

 「水瀬は何で学校に来たんだ?」

 水瀬がちょっと考える仕草をする。



 「なんとなくだよ」

 「何となくか。水瀬らしいな」

 なんか、すごく懐かしい感じがして、オレは思わず笑った。



 「それにしても、卒業した次の日に、学校で知ってる奴に二人も会うとは思わなかったな」

 「え?二人?私の他に誰かいたの?」

 「なんだ。おまえら二人で来たんじゃなかったのか?」

 意外だな。てっきり相沢と二人で来たものだと思ったのに。

 「私が二人で―――――え?北川君が会ったもう一人の人って―――――」





 「相沢だ」





 水瀬が驚いた顔をする。

 「なんだ。知らなかったのか」

 「どこで会ったの?」

 「視聴覚室で。あ、けど、今行ってもたぶんいないぞ」

 「そうなの?」

 「ああ。さっき、屋上に行くって言ってたからな。だから、たぶん屋上に行けばいるんじゃないか?」

 「北川君。私、屋上に行ってみる」

 ありがとう―――水瀬はオレに手を振って、階段の方へ歩いていった。







 ガララッ

 オレは視聴覚室のドアを開けた。

 休憩時間は、やっぱり終わっていた。

 「遅いぞ。北川」

 石橋が言いながら紙束を用意する。

 「あれ?相沢がいないぞ。まだ屋上にいるのかな?」

 さっき、水瀬が会いにいったからな。きっと二人で話込んでいるんだろう。

 「先生。呼んでこようか?」

 「いや、いい」

 石橋はオレの親切な申し出を断った。

 「いいって、相沢いなくていいんすか?」

 「ああ。相沢は、さっきのテストで終了だ」

 「え?アイツは終わりなの?オレは?」

 「おまえは後二つだ」

 「ずっけ〜、なんで相沢は終わりでオレは後二つなんだよ」

 「そりゃあ、相沢は赤点一個で、おまえは三個だからだ」

 「差別だー!ヒイキだー!!オレの春休みを返せー!!!」

 「うるさい!私だって、休日出勤なんだぞ!私ももう10年教師をやっているが、卒業式が終わっても補習が終わらなかったのは、オマエ等が初めてだ!!」

 「すげぇ!記録に残るかな!」

 「バカな事言ってるんじゃない。さぁ、テストをはじめるぞ!!」

 「このテストを受ければ卒業できるんすか?」

 「このテストでちゃんと点が採れればな」

 「採れなかったら?」

 「さらに補習だ」

 「オレの春休みがどんどん短くなる〜」

 「だから、そうならないように頑張ってくれ。私も休日出勤は嫌だ」

 「だったら、こんなことしないで卒業させてくれよ」

 「アホ!そんなことができるか!!」

 オレは仕方がないので泣く泣くテストを受けた。

 全身全霊をもって挑んだにもかかわらず、三つのうち合格したのは一つだった。

 むかつく事に、相沢はテストに合格し卒業を決めていた。

  (と言っても、通常の人間よりは遥かに遅い)

 だから、オレはまたしばらく学校に通った。

 最後の方の補習授業では、石橋は泣いていた。

 

 結局、オレの卒業が正式に決まったのは、3月の31日であった。





(完)





あかり「・・・・・・ねぇ、一つ聞いていい?」

矢蘇部「何だ?」

あかり「もしかして、『もうひとつの卒業』ってこっちがメインだった?」

矢蘇部「ああ。実はそうだ。『北川編』が本編で、『名雪編』が前振りだった」

あかり「『名雪編』で盛り上げといて、『北川編』で落とす。矢蘇っちの考えそうな事ね」

矢蘇部「ところが、『名雪編』の出来が思ってたよりかったんでな」

あかり「あっちを本編にして、こっちをおまけにしたと」

矢蘇部「まぁ、そう言うことだ」

あかり「相変わらず、行き当たりばったりね」

矢蘇部「まぁ、なんとかなったんだからいいじゃないか」

あかり「はぁ。今度はもうちょっと考えてSS書きなさいよ」

矢蘇部「努力はする」

あかり「ちなみに、矢蘇っちの嫌いな言葉は?」

矢蘇部「努力!!」

あかり「・・・・・・」

矢蘇部「・・・・・・なんとかなるさ〜」

あかり「あ、逃げた。けど、追いかけるのもアホらしいわ。ほっとこう」





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