カノンR.P.G.
第十五幕「赤色の魔法」
「・・・・・・だから、その時オレは言ったんだ。『ハネ毛のない北川は、ただの北川だ』って。
それを聞いたら、斉藤の奴も納得してくれたよ。やっぱ、人と人はわかりあえるモノなんだな。
そうそう。わかりあえると言えば、ニュータイプは・・・・・・」
北川の語りは、いまだに続いていた。
もう、かれこれ5分になるだろうか。
「ねぇ、祐一。飽きた」
真琴がダルそうに言った。
「オレも飽きた」
「ねえ、どついてきていい?」
「承諾」
真琴が北川の方へ走って行く。
「必殺!ダブル疾風火炎!!」
真琴の両腕から炎がほとばしる。
それは、狙いたがわず北川に命中した。
ゴボウッ!!
「ぎょえええええ!!」
燃える北川。
「あちっあちっあちっ!」
カチカチ山みたいに走り回る。
「みずっみずっみずっ!!」
北川が、両腕を天に向ける。
すると、天から水が、懺悔の部屋でバッテンを出された時のように降ってきた。
ざばばばばー
火が消える。
「いきなり何て事をするんだ。戦闘前の魔王のセリフを聞くのは、マナーだろ!!」
「うるさいわね。あなたの話が、校長先生の話並みに長すぎるのよ!!」
睨みあう北川と真琴。
「えうー、話は終わりですか?」
「あははー、無駄に長くてクダラナイ話でしたー」
「オチがなかった・・・・・・」
「聞いているのが酷でした」
みんな、やれやれといった感じで北川を囲む。
「さぁ、そろそろ行くぞ!北川!」
オレは北川に飛び掛った。
「くっそー、みんなしてバカにしやがって・・・」
何やらぶつぶつと言う北川。
そんなことはお構いなしに、オレは北川に突っ込む。
向こう側からは、舞も北川に襲いかかっていた。
ばっ
北川が両手をあげた。
そして、力ある言葉を紡ぎ出した。
「キャサリン・サイクロン!!」
途端に、北川の周りに突風が生まれる。
「うわっ!!」
「!!」
オレと舞は、その風に吹き飛ばされた。
オレはそのまま地面に叩きつけられる。
舞は、うまく着地をしたようだ。
「北川のくせに、魔法を使うのか」
「オレは魔王だぞ。これくらいの魔法は使えて当然だろう」
北川が、新たに呪文を唱え始める。
「唱えさせるか!!」
オレは立ち上がり、再び北川に向かって飛び掛った。
舞、真琴も同じように飛び掛る。
「遅いぜ!相沢!!」
北川が片腕をオレの方向へ、もう片方を舞と真琴の方向へ向ける。
「ジシン・サンダー・カジオヤジ!!」
片腕から雷、片腕から炎が生まれる。
ごうっ
オレは体を捻って、炎をかわす。
ばりばりっ
舞も同じように雷をかわす。
かわしきれなかった真琴を雷が襲う。
じばばばばばばばばっ!!
「あうー、痺れる・・・・・・」
オレと舞が攻撃をかわして着地した瞬間、大地が揺れた。
これには堪らず、オレと舞がその場で転ぶ。
「滅入るシュトローム!!」
北川の周りに水の壁が現れる。
それは、怒涛の勢いでオレと舞を飲み込み、押し流した。
ざっぱーん
「ぐへっ」
「くっ!!」
遠くへ運ばれるオレと舞。
「ははは、どうした相沢。そんなものか!!」
「くそっ!北川のクセに強いぞ」
「近づけない・・・・・・」
舞が悔しそうに言う。
「あの強力な魔法をなんとかしなければ・・・・・・」
実際、魔法のせいで近づくこともできない。
「こっちも、飛び道具で攻撃すればいいのよ」
真琴が簡単に言った。
「飛び道具って、さっき、オマエが繰り出したあれか?」
「そうよ。あれなら近づかなくても攻撃できるわ」
真琴が北川の方を向く。
「必殺!!ダブル疾風火炎!!疾風火炎!!もう一つおまけに超ダブル疾風火炎!!」
真琴の手のひらから、いくつもの火炎が生まれ、北川に向かって行く。
「なぁ、舞。オマエああゆうの出せるか?」
「私は剣しか使えない・・・・・・」
「栞は?」
「えうー、すみません。無理です」
「天野は?」
「私は回復専門ですから・・・・・・あっ!」
「えっ?どうした天野」
オレは天野の視線を追う。
視線の先。
北川が、真琴の繰り出した炎を跳ね返していた。
「ははははは!!貧弱!貧弱ぅぅぅぅぅ!!」
「危ない!こっちに飛んでくるぞ!!」
ひゅ〜
ぼんっぼんっぼんっ!!
辺り一面に炎が降り注ぐ。
「あうー、生意気よ。当たれ当たれ当たれ当たれ!!」
真琴がひたすら炎を繰り出す。
「貧弱!貧弱!貧弱!WRYYYYYYY!!!!」
片手でそれを跳ね返す北川。
ぼすぼすぼすぼすっ!!
降り注ぐ炎。
「やめろ!真琴!いくらやってもこっちに跳ね返ってくるだけだ!!」
「あうー、だって・・・・・・」
「真琴。やめなさい!!」
「あうー、美汐。わかったわ・・・・・・」
真琴が炎を繰り出すのを止めた。
アイツ、天野の言う事は、ちゃんと聞くのな。
「真琴の技もダメか・・・」
「どうやら、反射系の魔法を使って跳ね返しているらしいですね」
「え?佐祐理さん、わかるんですか?」
「わかりますよ。何故なら、佐祐理も魔法が使えますからね」
佐祐理さんがニコッと微笑む。
「今まで黙ってましたけど、実は佐祐理は、魔法の国のプリンセスだったのです」
佐祐理さんが、どこからか、異様に派手なステッキを取り出した。
そのステッキを構える。
『ぐるぐるぱぴっちょ、ぱぴっちょな〜!!
ひやひやどきんちょなぅっ!!
さ〜ゆりんっ!!!』
佐祐理さんの手に持ったステッキから光が溢れた。
光が、佐祐理さんの体を包み込んで行く。
ばっ!!
あたりに閃光がはしる。
「うっ!」
眩しくて、オレは一瞬目を閉じた。
そして、少しづつ目を開ける。
目の前には、アニメ的な格好をした佐祐理さんが立っていた。
「魔法少女!まじかる・さゆり〜ん!!」
びしっとポーズをとる佐祐理さん。
「あの・・・佐祐理さん・・・・?」
「あははー、今の佐祐理は佐祐理じゃなくて、さゆりんです」
「さゆりん?」
佐祐理さん、もといさゆりんが北川の方へ杖を向ける。
「みなさん。今から佐祐理の魔法で、北川さんの魔法を中和します。そうすれば、北川さんはもう魔法を使えません。ですから、そこから後は皆さんにお任せします」
「そんなことができるんですか?」
「まじかる・さゆりんにお任せ!!」
さゆりんが杖を頭上に掲げる。
『はらい〜たまえ〜、しずめ〜たまえ〜、きよめ〜たまえ〜』
さゆりんが、格好に全く合わない言霊を唱える。
『イイクニツクロウカマクラバクフ!ハクシニモドソウケントウシ!!』
さゆりんの杖の先から赤いオーラが広がる。
オーラがゆっくりと辺りに広がってゆく。
『トオキヤマケフコエテアサキユメミシエイモセスン!!』
「ぐっ!これは・・・」
北川が声をあげる。
「オレの魔力が中和されてゆく!!」
『ろむすかぱろうるらぴゅたっ!!』
さゆりんの呪文詠唱が止まった。
ヴンッ
赤いオーラが拡散してゆく。
辺りが妙に安定してゆく。
「相沢さん。北川さんの魔力を中和しました。これで、もう北川さんは、魔法を使えません」
「くっ、やるな!まじかる・さゆりん!!」
北川が心底悔しそうな顔をする。
「わかりました、佐祐理さん。後は、オレ達に任せて下さい」
オレは北川の方を睨む。
「さぁ、北川。もうさっきのように魔法は使えないぞ!!」
「くっ、良いだろう。相沢。これぐらいはハンデだ。だがな、オレの特技は魔法だけじゃないぜ!」
魔法を封じられたにもかかわらず、北川は不敵に笑った。
次回「炭色の妖術」に続く
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