カノンR.P.G.
第六幕「紫色の推理」
「私と栞は占い師よ」
香里はそういった。
「あははー、探している人が見つかりましたねー」
「これで、ゆっくり食事ができる」
をい。
「オレ達は、いろいろ占ってもらおうとここに来たんだぞ」
そういって、香里と栞の方を向く。
「ホントに占い師なのか?」
「そうよ」
「占ってもらいたいことがあるんだが」
「急ぎの用なの?」
「いや、そんなに急いでるわけではないんだが」
「なら、食べてからにしましょう」
「あぁ」
確かに急ぐ必要はどこにもない。
オレはウェイトレスを呼んで、注文を行なった。
オレはコーヒーを飲みながら、香里と栞の格好を観察してみた。
香里は、フード付きの紫色のローブを着込み、その上から黒色のマントを羽織っている。
本人は「占い師」だと言ってたが、どうやってみても「魔法オババ」にしか見えない。
でっかい釜で緑色のドロドロしたものを煮込みながら、
『いーっひっひっひっひー』
と笑っていたらさぞ似合うだろう。
栞は、香里と同じデザインの白いローブを着ている。
そして、マントの代わりにいつものストールを羽織っていた。
『見習い魔法使い』という感じである。
「本当に占い師なのか?」
もう一度、香里に聞いてみる。
「正確に言うと違うわ」
「違う?」
「私は『占い師』というよりは、『情報収集師』ね」
「情報収集師?」
「いろいろな情報を自分のもとに集める事ができるの」
「どういうことだ?」
さっぱりわからない。
「説明を聞くよりは、体験をした方が早いわ」
そう言うと、香里は懐から水晶球を取り出した。
それを机の上に置く。
なんか本格的だな。
香里が水晶球の上に手をかざすと、球はボウッと淡く光りだした。
「美坂香里の名において命ずる。その者、相沢祐一の心の声を、風の力を使いて音とせよ」
ビュン
空気の密度が変る。
『・・そ・・・して・・・・だよな・・・・あ・・・・』
どこからか声が聞こえてくる。
「もうちょっと」
そういって水晶球をガンガン叩く香里。
そんな、ラジオじゃないんだから。
『ガガッ・・・・やっても魔法使いにしか見えない。・・・』
「来たわ。」
水晶球の辺りから、音声が聞こえてくる。
『でっかい釜で緑色のドロドロしたものを煮込みながら、
いーっひっひっひっひー
と笑っていたらさぞ似合うだろう・・・』
こ、これは、オレがさっき考えていた事。
すげぇ!
「魔法オババみたいで悪かったわね」
香里がオレを睨んでくる。
「呪い殺してあげましょうか?」
「すみませんでした」
素直に謝る。
じゃないと、本当に呪いをかけられそうだ。
「それにしてもすごいな。何でもわかるのか?」
「何でもってわけではないわ」
香里は水晶球をしまいながらいった。
「例えば、今みたいに人の心を読めるのは、私が良く知っている人のだけ。それに、わかることは少しだけで、しかもタイムラグがあるの」
「他にはどんなことがわかるんだ?」
「この世界に起こっている事なら、だいたい今みたいにわかるわ。ただ、一度にわかる事はほんの少しだけどね」
「人探しなんかは、できないのか?」
「できないことはないけど、それは栞の方が正確にできるわ」
そういえば、栞も占い師だと言ったっけ。
「あのー・・・」
となりで聞いていた佐祐理さんが話しかけてきた。
ちなみに、名雪と舞と栞はジャンボミックスパフェデラックスに挑戦している。
「その占いでですね、この世界のことはわからないんですか?」
そうか、この世界で起きていることがわかるのなら、この世界そのものについてもわかるのではないか。
「佐祐理は、今いるこの世界は誰かの夢なのではないかと思います。それで、そのことが正しいかどうかを占ってもらいに来たんですけど」
そういって、佐祐理さんは香里の顔を見つめる。
オレも同じように香里を見つめる。
「私も同じことを考えたわ」
香里はそう言った。
「今、私がいるのは夢の中なのじゃないかってね。それで、占ってみたの」
「結果は?」
「夢の中ってのは確かね」
佐祐理さんの考えは当たっていたのか。
「誰の見ている夢かは、わからないのですか?」
「それも占ってはみたのだけど、わからなかったわ」
香里は、そう言ってため息をついた。
「他にも、いろいろ占ってみたけど、この世界を終わらせる方法、つまり、夢を見ている誰かを起こす方法だけは、わからないの」
「能力の限界ってわけか」
「違うわ。プロテクトがかかってるの」
「プロテクト?」
「誰かが、おそらく夢を見ている張本人が、私が調べるのを妨害しているみたいなの」
「それは、その人が夢を覚まされないようにしているということですか?」
「たぶん・・・」
そこで香里は口を閉ざした。
「結局、わからないのには違いないな」
「そうですね」
そこで、3人とも言葉が途切れてしまった。
「ごちそうさまです」
「おいしかった」
「お腹一杯だお〜」
どうやらあちらの3人娘は、パフェを完食したらしい。
3人寄ればノヅチの胃袋である。
「どうしたんですか?3人とも暗い顔して」
栞がオレ達をみて言う。
「いや、ちょっといろいろ考えごとがあってな」
ふーん、と言う顔で栞が頷く。
「そういえば、祐一さん達は、何か占ってほしいことがあってここに来たのではなかったですか?」
「今、香里と話をしたんだが・・・・結局、あまり進展はしなかったんだ」
「そうですか。残念ですね」
栞も一緒に少しガックリする。
「そういえば、香里と栞はここで何をしているんだ?」
ふと、心に浮かんだ疑問を問い掛けてみる。
「私は、ここで情報を集めているの」
香里が答えた。
「この世界を終わらせる直接の方法はわからないわ。けど、情報を集めつづければ、何かヒントが得られるかもしれないから」
「私は、ここでお姉ちゃんを手伝っているんです」
「それならば、佐祐理達もそれを手伝いますよ」
佐祐理さんが話しに加わった。
「私と舞で、街の中をまわって、いろいろな事を調べてきますよ。ね、舞」
「お散歩」
「そうね。私と栞だけより、みんなでやった方が効率がいいわね。お願いしてもいいですか?」
「まかせておいて下さい」
「はちみつくまさん」
舞と佐祐理さんは、力強くうなづいた。
「名雪と相沢君はこれからどうするの?」
香里は、今度はオレと名雪に聞いてきた。
「私は、勇者さんだから、魔王をやっつけに行くの〜」
「名雪、あなた勇者なの?」
「そうだよ〜。『目覚めの勇者』だよ〜」
「魔王やっつけに行くって、北川君を?」
「うん」
香里がそこで、何かを考える。
「どうした?香里」
「もしかしたら、そうかもしれない」
「?」
香里が一人で考え続けている。
「名雪、相沢君」
「なに?」
「なんだ?」
「あなた達は、勇者として北川君を退治しに行ってきて」
「ああ、もとからそのつもりだ」
「もしかしたら、それでこの世界の謎がかなり解けるかもしれない」
「どういうことだ?」
「言葉通りの意味よ」
いや、わからんのだが。
「それで香里〜。北川君のいる所を占って欲しいんだけど」
「それなら、栞の方が得意よ。栞」
「はい。私に任せて下さい」
栞はテーブルの上を片して、スケッチブックを取り出した。
「祐一さんと名雪さんも手伝って下さい」
「ああ、構わないが、何をするんだ」
「とりあえず、私の向かいに座って下さい」
オレと名雪は、栞の対面の席に腰を下ろす。
栞はスケッチブックのページを開き、机の上に広げた。
開かれたページには、たくさんの文字が羅列されている。
ん?良く見ると、いろは50文字のような。
栞はそのページの上に、一枚の十円玉を置いた。
「用意はいいですか?」
栞がオレと名雪に問い掛ける。
「いいぞ」
「ラジャーだよ」
「では、始めます」
栞は、顔の前で人差し指をピッと立てた。
「三人でこの十円玉の上にひとさし指をのせるんです」
そういいながら、十円玉に指をのせる。
オレ達もそれに習う。
「目を閉じてください。あ、指に力を入れないで下さいね」
これって・・・
「なぁ、栞、これってコックリさんなんじゃ・・・・」
「そんなこと言う人嫌いです」
そういって、膨れる栞。
嫌いもクソも、まんまコックリさんではないか。
「祐一さん。呪文を唱えるので、目を閉じて集中してください」
仕方がないので、目を閉じる。
「いきますよ。コックリさん、コックリさん。北川さんの居場所を・・・・」
なんか全てが阿保らしくなってきた。
(続く)
次回「空色の出会い」に続く
今回セリフばっか
しかも、わかりにくい・・・
反省してます
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