カノンR.P.G.
第七幕「空色の出会い」
「ポカポカの天気だね〜」
名雪が嬉しそうにはしゃぐ。
「ピクニック〜、ピクニック〜」
ぴょんぴょん跳ね回る名雪。
「遊びに行くんじゃないんだぞ」
一応忠告をするが、名雪には聞こえてないようだ。
無理もない。
雲一つ無い良い天気である。
名雪でなくたって気分が陽気になってくる。
オレ達は今、魔王北川がいると思われる場所に向かっている。
百花屋で栞に占ってもらったところ、
と言っても、コックリさんであったが・・・・
北川がいるのは、ものみの丘らしいということであった。
夢から抜け出す方法は香里達に任せて、オレと名雪は魔王討伐に向かうことにしたのだ。
名雪が勇者だからということもあるが、
オレと名雪に、この世界の謎を解くなどとゆう大それたことができるとも思えなかったので、こちらを選択した。
本来なら、魔王に戦いを挑みに行くのであるのだから、かなりのプレシャーがあるのかもしれない。
しかし、このポカポカ日和、目的地はものみの丘、さらに待っているのが北川ということもあって、オレも名雪も気分はハイキングであった。
「祐一ちょっと待ってて」
「どうした、名雪。トイレか?」
名雪にぽかっと殴られる。
「違うよ。コンビニに行ってお弁当を買ってくるんだよ」
「そういえば、もうすぐお昼だな」
「祐一は何がいい?」
「オレは、から揚げ弁当を頼む」
「うん。わかった。ちゃんと待っててね」
「ああ」
「いなくなっちゃダメだよ」
「ああ」
「ここにずっといるんだよ」
「ああ・・・ってしつこいぞ!」
「だって、祐一、いつもいなくなっちゃうんだもん」
「大丈夫だ。ちゃんとここで待ってる」
「ホント?」
「ホントだ」
「ホントにホント?」
「ホントにホントだ」
「ホントにホントにホントにホントにホントにホントにホントにホント?」
「ホントにホントにホントに・・・・もういいっちゅうねん!」
「ウソついたら針千本だよ〜」
「ああ、わかったから早く行ってこい」
「今はサービス期間中だから、退魔針だよ〜」
「わかったっちゅうねん!」
「待ってるんだお〜」
ようやく、名雪はコンビニの中に入っていった。
それにしても・・・・
なんで、コンビニとかは普通なんだ?
学校なんて城になってたとゆうのに。
コンビニは完全にいつものコンビニであった。
中の店員も普通の格好である。
客の格好だけがいつもと違う。
店の外に、ダンボールや発泡スチロールが乱雑に積み上げてあるところまで一緒だった。
「いったい、誰がどういう夢を見ているんだ?」
よっぽど変なヤツに違いない。
などとくだらない事を考えて時間を潰していると、
「ゆーいちくーん、とーめーてー!!」
どこかで聞いたことのある声が聞こえてきた。
「パターン青!あゆだな!」
商店街でこの状況ならそれ以外にありえない。
「どこだ、後ろか!」
あゆのタックルはたいがい後ろから来る。
というか、前からなら避けられるので後ろだけを注意すればよい。
ばっ
素早く後ろを振り返る。
「いない!」
しまった!裏をかかれたか!
ならば前か!
ばっ
「前にもいない!どこだ!」
四方を素早く確認したが、どこもあゆの姿が見えなかった。
しかし、あゆの気配は近づいてくる。
「ゆーいちくーん!」
もう一度、あゆの声。
すぐ近くから聞こえる。
「上か!!」
空を見上げる。
いた!
なんとあゆは空を飛んでいた。
どひゅん!!
あゆが凄い勢いでこちらに飛んでくる。
「この圧倒的パワー!まずい衝突する!」
どごぉぉぉぉぉーん!!
「げふぅ!」
「うぐぅ!」
あゆの体がオレの体に突き刺さった。
そのまま二人重なるように3メートルほど吹っ飛ぶ。
ずざざざざっ!
商店街のレンガの上をしばらく滑走して、ようやく体が止まった。
「うぐぅ〜」
「つ、潰れる・・・」
「うぐぅ、ボクそんなに重くないよ」
「いいから、早くどいてくれ・・・」
あゆが立ち上がる。
「よかった。やっと止まったよ」
「いたたたたた」
オレも立ち上がった。
「いきなり何するんだよ!あゆ!」
「うぐぅー」
「うぐぅじゃわからん」
「止まれなかったんだよ」
「止まれない?」
そういえば、コイツ空を飛んでなかったか?
改めてあゆを見てみる。
あゆの背中には羽が生えていた。
いつものリュックに付いているプラスチックの羽ではない。
本物の鳥の羽が背中から生えているのだ。
「あゆ、背中のそれはなんだ」
「羽だよ」
「そんなことは見ればわかる。なんで羽が生えているんだ?」
「うぐぅ。ボクにもわからないんだよ」
そういって、羽をパタパタ動かす。
「気がついたら背中に羽が生えてて、動くかなーて思ったら、パタパタ羽ばたいて・・」
あゆの背中の羽が広がる。
「いきなり体が宙に浮いて、降りれなくなったんだよ」
「それで?」
「それで、空を飛んでたら祐一君が見えて、祐一君にぶつかって止まればいいやって」
「それでオレに人間ロケットを決めたのか」
「違うよ。阿○羅火○弾だよ」
「なお悪い!」
「うぐぅ、仕方がなかったんだよ」
あゆの背中の羽がはばたきだした。
「ところで、あゆ」
「何?祐一くん?」
「体が宙に浮いてるぞ」
「?」
あゆが自分の足元を見る。
あゆの足は地面から数センチ浮かびあがっていた。
「うぐぅ!?」
「あゆ、背中の羽ばたきを止めろ!」
「うぐぅ!」
あゆの顔に力が入る。
しかし、羽ばたきは弱まるどころかさらに強さを増し、それに伴いあゆの体は浮かびあがってゆく。
「うぐぅー、止まんないよ」
「あゆ!」
オレはとっさにあゆの手をつかんだ。
しかし!
あゆの背中の羽ばたきは予想以上に強く、オレもろとも上昇してゆく。
「うおおお!オレは高所恐怖症なんだぞ!なんとかしろ!あゆ!」
「うぐぅー、がんばってはいるよ!」
あゆはぐんぐん上昇してゆく。
すでに電柱と同じぐらいまで浮かびあがっている。
ふと、下を見ると名雪がコンビニから出てきた。
「祐一?」
名雪がオレの姿を探している。
「名雪、ここだ!」
しかし、名雪は気付かない。
「ゆ〜いち〜!」
相変わらずオレを探している。
「名雪オレはここだ」
オレは名雪に向かって手を振る。
「あ、祐一くん!今手を離したら・・・・」
「あ!?」
しまった!
あゆから手を離してしまった!
途端に落下するオレの体。
「うひょおぉぉぉぉぉぉぉ!」
「ゆーいちくーん!」
ヒューン
ボスッ
オレは、コンビ二の横のダンボールと発泡スチロールの山に突っ込んだ。
名雪が気付いてこっちに走り寄ってくる。
うめいているオレの横に立って、名雪はこう言った。
「嘘つき・・・・」
薄れゆく意識の中でオレは思った。
「この状況で言うことはそれだけかよ」と。
次回「緑色の丘」に続く
このあとがき部分の言葉を考えるのが億劫になってきました。
ってなことで、今回でこのあとがき部分は終わりです。
きちんとしたあとがきは、この話が完結した時にでも書きます。
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